この日のFX市場は、大きく2つのテーマに集約された。日本の政治要因による円買いと、豪州の金融政策(RBA)を背景にした豪ドル買いだ。米国では重要指標(雇用統計)を控え、ポジション調整の動きが強まり、ドルは全般に上値の重い展開となった。


東京時間:円は続伸、USD/JPYは「154」を軸に下押し

序盤から円は堅調に推移し、USD/JPYは日中で約0.4%下落。背景には、日本の政治情勢をめぐる不確実性(財政への警戒感など)がいったん後退し、リスクプレミアムが縮小するとの見方が広がったことがある。

値動きは短期主導のモメンタム色が強く、USD/JPYは戻りを試すたびに売りが出やすかった。市場では**「154円台」が目先の分岐点**として意識され、流動性が集まりやすい一方で、上下にストップが置かれやすい“節目”になった。


同時進行:豪ドルは0.71台へ、RBAのタカ派姿勢が追い風

一方、豪ドルは勢いを増し、**AUD/USDは0.71を上抜けて0.7124近辺(+0.7%)**まで上昇。2023年2月以来の水準が意識されるなか、材料となったのは「利上げそのもの」だけではない。

RBA(豪準備銀行)当局者から、インフレはなお高水準で、必要なら追加引き締めも辞さないという趣旨のメッセージが繰り返され、市場の利上げ期待が補強された。結果として、豪ドルは“押し目買い”が入りやすい通貨として浮上した。


注目されたテクニカル水準(東京時間の焦点)

USD/JPY

  • 154円台:短期の「判断ライン」
  • これを下回る局面では売りが優勢になりやすい

AUD/USD

  • 0.7100:ブレイク後のサポート候補
  • 押し目では同水準の防衛が意識されやすい

欧州時間:方向感は薄れ、クロス主導のフローへ

欧州勢の参入後は、ドル単体のトレンドというよりも、クロス(特に円絡み)によるフローが主役になった。ユーロやポンドが円に対して下落する動きも見られ、**この日のテーマは「ドル」より「円の強さ」**として表現されやすかった。

また、市場の関心は次第に「米指標前のポジション調整」に傾き、ブレイクアウトを追いかけるよりも、行き過ぎを戻すような取引が増加。重要イベント前特有の、極端な値動きを避けるムードが広がった。

それでも豪ドルだけは例外的に底堅く、RBAの引き締め路線と国内インフレの粘着性を理由に、実需・中長期勢の押し目買いが入りやすい地合いが続いた。


NY時間:米小売が伸び悩み、金利低下→ドル失速

相場の決定的な転換点は米時間に入ってからだった。米小売売上高が12月に横ばいとなり、消費の勢いが想定ほど強くないとの見方が広がった。これを受けて米金利は低下し、ドルの支えが後退する“典型的な流れ”が強まった。

金利が下がると、ドルの金利優位(キャリー)が相対的に薄れ、非ドル通貨を保有しやすくなる。結果として市場の空気は、**「戻り局面ではドルを売る」**方向へ傾斜。特に、国内要因が強い豪ドル(AUD)や、フロー主導で買われやすい円(JPY)に対してドルが弱含みやすかった。

さらに、米輸入物価が前年比で横ばいだったことも、インフレ再燃懸念を強める材料にはなりにくく、金利低下とドル軟化の流れを補完した。


主要通貨の水準(取引時間中の目安)

  • EUR/USD:1.1912近辺
  • GBP/USD:1.3661近辺
  • DXY:96.66近辺

後場:豪ドルは上昇を維持、円買いも継続 ボラは秩序的

後半は新規材料よりも、「節目でどう推移するか」が焦点になった。特にAUD/USDが0.71を維持できるかは重要で、ブレイク直後に失速すると急反落につながりやすい。しかしこの日は比較的落ち着いた推移で、短期の踏み上げだけではなく、一定の買い需要に支えられていることが示唆された。

USD/JPYも重い地合いが続き、選挙結果を受けた日本の政治・財政見通しに対する評価の変化が、じわじわと円買いにつながっているとの解釈が優勢だった。


引けと見通し:雇用統計前に「攻防ライン」が明確に

この日のまとめはシンプルだ。米指標の弱さが金利を押し下げ、ドルを圧迫。その一方で、円は日本の政治要因の再評価で続伸し、豪ドルはRBAのタカ派姿勢でアウトパフォームした。


これからの焦点

米非農業部門雇用者数(NFP)

  • 予想は「緩やかな増加」でも、相場はサプライズに敏感
  • 強い結果ならドル買い回帰、弱い結果なら「金利低下→ドル安」の循環が加速しやすい

豪州:次の材料はインフレと雇用

  • 市場は5月までの追加利上げ確率を相応に織り込みつつある
  • 指標次第で、豪ドルの上昇が伸びるか、0.71近辺で失速するかが分かれやすい

テクニカルの要衝

  • AUD/USD:0.7100(新たなサポート候補)
  • USD/JPY:154(短期のピボット)
    ここを境に、下落再加速か、いったん安定かが判断されやすい

まとめ

きょうのFX市場は、単一のニュースで動いたというより、金利とポジション、そして分かりやすい節目(テクニカル)が絡み合って方向が出た一日だった。重要な米雇用統計を控える局面では、こうした「地合いと水準」が、ヘッドライン以上に値動きを左右しやすい点が改めて意識された。

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投稿者 Watanabe, Kenji

東京を拠点とする経験豊富な金融専門家である渡辺健司氏は、日本の大手証券会社でキャリアを積んだ後、現在は独立系アナリストとして日本株およびアジア市場のマクロ経済分析を専門としています。その鋭い洞察力と分かりやすい解説には定評があり、多忙な本業の傍ら、余暇を利用して invesfeed.com の寄稿ライターとしても活動し、グローバルな視点から個人投資家向けに最新の市場トレンドや投資戦略についての分析記事を執筆しています。

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