本日の外国為替市場は、全体として慎重なムードの中で始まった。東京時間序盤、ドル指数(DXY)は前日終値付近で小動きとなり、主要通貨ペアも狭いレンジでの取引が中心となった。EUR/USDは1.0970〜1.0990の範囲で推移し、短期筋のフローが中心となる中、明確なトレンドは形成されなかった。
市場関係者は、前日の米国市場で見られた金利低下の流れが一巡したことから、「新たな材料待ち」の姿勢を強めていたとみられる。アジア時間では特段の経済指標発表がなかったこともあり、投資家は欧米時間のイベントに備えてポジション調整にとどめた。

欧州時間:ユーロ買い優勢、テクニカル節目を試す

ロンドン市場に入ると、ユーロが対ドルでじり高となった。欧州株式市場が堅調に始まったことでリスク選好がやや改善し、EUR/USDは1.10の心理的節目を意識した動きとなった。一時1.0998まで上昇し、日中高値圏を更新したが、1.10付近では戻り売りが厚く、明確なブレイクには至らなかった。
ある為替アナリストは「1.10は短期的に非常に意識されやすいレジスタンスであり、出来高を伴った上抜けがなければ、上値は限定的になりやすい」と指摘している。

NY序盤:米経済指標でボラティリティ拡大

ニューヨーク時間序盤に発表された米国の経済指標が、市場の流れを一時的に変えた。指標内容は強弱入り混じる結果となり、米国債利回りは短時間で上下に振れた。これを受けてドルは乱高下し、EUR/USDは1.0955まで急落する場面も見られた。
この局面ではストップロスを巻き込んだ動きが観測され、短時間でのボラティリティ上昇が特徴的だった。市場では「ドル買いの勢いは限定的で、持続性に欠ける」との見方が優勢だった。

NY後半:ドル買い失速、レンジ回帰

NY後半にかけては、ドル高の動きが次第に弱まり、主要通貨は再びレンジ内に戻った。EUR/USDは1.0970近辺で落ち着き、日中の値幅を整理する展開となった。出来高も次第に減少し、積極的な新規ポジション構築は見られなかった。
市場参加者の間では、次回の米金融政策関連イベントを前に「様子見姿勢」が強まっているとの声が多い。

今後の注目点

本日の為替市場は、明確なトレンド形成には至らなかったものの、1.10という重要レベルの意識が改めて確認された一日となった。今後は米国のインフレ指標やFRB高官の発言が焦点となり、これらがドルの方向性を左右するとみられる。投資家は引き続き、テクニカル水準と金利動向の両面に注目していく必要があるだろう。

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投稿者 Watanabe, Kenji

東京を拠点とする経験豊富な金融専門家である渡辺健司氏は、日本の大手証券会社でキャリアを積んだ後、現在は独立系アナリストとして日本株およびアジア市場のマクロ経済分析を専門としています。その鋭い洞察力と分かりやすい解説には定評があり、多忙な本業の傍ら、余暇を利用して invesfeed.com の寄稿ライターとしても活動し、グローバルな視点から個人投資家向けに最新の市場トレンドや投資戦略についての分析記事を執筆しています。

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